(4)
次の日、結局兄貴に相談したところで何も解決はしなかった。
それは兄貴が頼りないとかではなく、実際のところ。私なりの方法で何かをすればいいだけだった。
私は学校への道をゆっくりと進んでいた。みんなよりも結構早めな登校時間だった。
そのため、通学路には制服姿の人物は私しか居ない。
それは普段通りだが、今日は酷くこの道のりが長く感じられた。
そして、重い足を引きずっていつの間にか校門に辿り着いていた。
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嫌なものは本当に速い・・・。悲しいけど。
あっという間に時間は放課後になり、私は重たく感じられる荷物を持ち更衣室へと向かった。
???
更衣室へと着くと、普段と違う雰囲気だった。
誰一人着替えておらず。ある者は雑談を楽しみ。ある者は寝ている。
「草野さん、何か今日ね話し合いがあるみたいだから着替えなくていいって。」
「そうなんだ、わざわざありがとう。」
話しかけてきたのは同じく1年の工藤さんだった。
彼女は簡単に言うと天然な子だが。何かと周囲に気がつかえるいい子だろう。
私は一言お礼を言って荷物を置き、適当な席に腰を掛けた。
教室には部長の姿は無い。
教室を再度見渡すと、特定のグループに重い空気があった。
それは居なくなった2年生の友人グループだった、まぁそれもそうだろう。
居なくなった人達が自分達のことを先生にチクったとか思っているんだろう・・・。
そんな風に教室を見回していると廊下からコツコツという音が近づいてきて教室の扉がガラッと開いた。
顧問の武田先生を先頭に、後ろに実早部長。
それまで騒がしかった教室は静かになった。
「え〜、昨日。少し悲しい事件があってな。」
静けさは、先生のよく言う言葉から破られた。
「あまり言いたくはないんだが。部内でイジメが起こった。
先生は、こんな事態を早期に気付けなった事を大変悔しくおもう。
しかし、起こってしまった。おれの部活内でもう2度とこんな事は起って欲しくない。
もし、現在そういった事が行っている者が居るなら。この場を持って先生に言ってくれ。」
もちろん、そんな人は手を挙げるわけもない。大人は知っている。イジメをしてる生徒が自ら名乗らない事を。
そして、その逆。虐められている生徒も手を挙げられないということ。
だから、部活内を問わず。学校内のイジメが発覚するのは、イジメが極端になり行き過ぎてしまった場合。
被害者の親から担任教師に連絡が入る時。
または、被害者、加害者以外の第3者からの担任への告り。
大体はこんなところだろう。あとは偶然先生がその現場に遭遇した場合くらいだ。
今回は一番最後のものに該当するが、
被害者が、加害者に成り。
加害者が、被害を受けた。
かなりの例外パターンだろう。
「居ないな。それでだ」
先生の話が続く。
「みんなにも今回の事件を理解してもらう為、連帯責任をとってもらう。
連帯責任といっても、部活動の中止ではなく。
これから一週間早朝の掃除を行ってもらう。いいな。」
一同は何も答えない。それは、現代の社会にとっての”YES”と捉えられるだろう。
「で、掃除は明日から一週間だ。よろしくな。
部長から何かあるか?」
「はい。」
実早は1歩前へ出ると。静かに話始めた。
「今回、私は部長として何も出来ず、その責任として。今夏の大会を辞退させていただきます。
そして、その代役として・・・。」
代役・・・部長自ら。それを口にするのはかなりきつい事だろう。
別に大会に出たくなくて代役を立てるわけではない。
「3年の三神桜。に出てもらいたい。三神いいか?」
三神桜、態度が悪く。どちらかというと不良の部類に入るが余り外の事を気にしない。
顔は整ったどちらかというと美形の部類に入る。
多分、掃除も来ないだろう。
何せ練習も自分の来たい時にしか来ない為、幽霊部員扱いに近い存在。
部長の実早と近い気質がある。その為選ばれたのだろう。
「ああ、別にぃ。」
三神はやる気が非常にない。
「よろしく、あと1年の草野が今回お家の事情で大会に出られなくなった。
それで、その代わりに工藤さん。お願いできる?」
工藤さんは暫くたじろいだあと。
「はぁ、はい!」と元気良く返事をした。
今回の話で、部長の大会出場は公的に無いものになって。
私も普通の扱いになった。
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